今月の特集
僕ら、中高生にできるボランティア活動って、一体なんだろう―。
タイの子どもたちに、家庭で眠るおもちゃを送る活動を続ける「トイバンク」は、中高生らしいボランティア活動の姿を求めた、一人の高校生の「思い」からはじまった。
1999年に実現したその取組みは、徐々に裾野を広げ、今年6月には、名古屋市内の4つの高校が参加して、6000個のおもちゃがタイに送られた。輸送活動は3回目を数え、マスコミにも大きく取り上げられるように。
トイバンクの活動にたずさわる高校生たちの、その横顔を取材した。
「トイバンク」というのは、タイにあるおもちゃの貸し出し施設で、日本でいう児童館にあたる。おもちゃに触れる機会のない貧しい子どもたちのためにと、ピチットラクタン都知事(当時)の発案でこれまでバンコク市内に26カ所作られた。しかし、寄付されるおもちゃは皆無に等しく、トイバンクにおもちゃが並んだのは、タイに進出している愛知県出身の企業家の集い「愛知会」が寄付をしたときがほぼ初めて。
後に、「トイバンク」をそのまま団体名にして活動を立ち上げることになる的場創平君は、当時南山中学の3年生、愛知会の取組みを新聞で知った。
「これだ!って思ったんです。こういうボランティアこそ、中高生の僕らにふさわしいと」
生徒会執行部のメンバーだった的場君は、以前生徒会活動の中で、募金活動を経験したことがあった。ただ、「届けたいのは、お金じゃなくて気持ちなのにって、スッキリしないものが残った」と言う。そして、その日から、自分たちにふさわしい活動を探し始めていたのだ。
新聞の切り抜きを片手に生徒会に持ち掛け、早速ポスターやチラシなどを配って全校生徒に呼び掛けた。たった一週間で、段ボール19箱分、830点のおもちゃが集まった。10万円掛かるという輸送費には、愛知会のメンバーでもあった運輸会社、フジトランスコーポレーションが寄付を申し出てくれた。的場君自身、現地の贈呈式にも立ち会い、トイバンクの活動は華々しいスタートを切った。
その後、トイバンクの活動は生徒会の手を離れ、的場君とその友達による孤独な取組みになっていた。
「2回目もどうしてもやりたかった。現地を見たときに、まだまだ全然おもちゃが足りないって思ってたから」。そんな時、運良く、同じ南山学園の聖霊高校から創立50周年事業としてトイバンクの活動に参加したい、という申し入れがあった。両校の生徒会や周年事業委員会の間で何度か話し合いが持たれ、2回目の6〜7倍、8100点のおもちゃが集まった。2回目の輸送は去年の秋。現地のトイバンクを見学した聖霊高校代表の小崎恵さん(現・大学生)は、当時を振り返る。「おもちゃを手にした子どもたちのあどけない笑顔を見たとき、本当に嬉しくて。この活動に、あたらめて何とも言えないやりがいを感じました。」
的場君が、ボランティアに興味を持ちはじめたのは、中学2年生のとき。冬休み、学校の先生に誘われてホームレスの人に食事をふるまう炊き出しボランティアに参加した。
「それまでは、自分とは別世界の人たちだと思っていました。でも、色んな話を聞いて回って、その実態がわかったときに、彼らを少しだけ違う目で見えるようになりました。」
と同時に、的場君の心の中でくすぶっていた何かに火が点いた。トイバンクの2回目の輸送が終わったときには、「タイの学校に図書館を作ろう」という触れ込みのボランティアに両親の反対を押しきって参加した。
「現地の子どものキラキラした目に感動して、この国には日本が無くしたものがあるんだな、ってしみじみと思いました。それから、考えるようになりましたね。ボランティアっていうのは、なんなのかって。お金の援助だけじゃじゃなくて、人と人がつながっていける援助ってないのかなって。トイバンクの原点もそこにあるんですけどね。」
自分の中に芽生えた何かを共有したくて、ボランティアに友人を誘ったりもしたが、続かない人が多かった。「僕の場合、楽しいからやってるんです。人のためにという意識はないですね。自分が楽しくないと、続きませんよね。」
的場君の誘いによりボランティアの楽しみを知った友人もいる。トイバンクのメンバーでもある神野洋平君は言う。「学校の中だけにいると、世界が何も見えてこないんですよ。学校では、自分だけに一生懸命な人が多いし。的場君に、色々なとことろ連れていってもらって、今まで自分が全く知らなかった世界を見れたのが嬉しいです。」
トイバンクの活動は、生徒会活動の側面だけでなく、本当にやりたいと願う一人ひとりの高校生による自主的な活動も活発になってきた。名古屋市内にあるタイ雑貨のお店「まかふしぎ」では、月に1度の割合で20人くらいのメンバーが集まり、タイの現況を勉強したり、トイバンクとして今度はどんな取組みをすべきか、などを話し合ったりする。そこで今、議論の的になっているのは、現地情報を入手できる手段をいかに得るかということ。「おもちゃを送りっぱなしという状況で、手応えがないのが悩みなんです。おもちゃって僕らの『気持ち』なんですよね。だからその気持ちが、本当に伝わっているのかどうかは気になるところです。」
そう話す的場君も、来年は高校卒業の年だ。「きちんとした道筋を付けて、後輩達に引き継いでいけたら最高ですね。」
6月26日には、第3回目のおもちゃの輸送が成功した。集まったおもちゃは6000個、参加した学校は南山、聖霊のほか、淑徳高校や半田高校。地道な取組みは確実に実を結び、輸送活動も複数の高校に広がっている。
|
|||
|
|