<2000.10.8>
結婚式の翌日、我々は旅に出ることにした。何処に行くかなどまったくきめるゆとりがなかったため
地図を広げて各地の風景を思い描いてみる。結婚式というのはチヤホヤされる空間である。みんなが笑顔で接してくれるし、良い事ばかり話してくれる。その反面、式が終わって2人きりに戻ったときの、なんともいえない孤独感といったらない。この世に2人だけが生き残ったような寂しさだ。こんなに寂しくなってしまうなど、まったく予期しなかったことだ。さてそうなってくると”暖かく迎えてくれる街”に行きたくなるものだ。この秋口は何処へいってもかなり寂しい。そんななかでひょっとしたら心暖まる街なのではないか・・・そう思えたのは函館だった。
昨夜のことだ。結婚式が終わったら、そのまま温泉付きの都会のホテルでのんびりしよう・・・そう考え、泉質優先主義そっちのけで、普段ではまったく行く気も起こらない札幌の都心にあるアートホテルズという温泉付き高層ホテルに予約を入れようとした。連休初日だが、あそこは部屋数も多いし、空室なんていくらでも・・・そう思っていたら見事にフラれた。しょうがない・・・温泉はないが雰囲気の良さそうなモントレーでもいいか・・・電話をしてみるとこれまたフラれ。もうヤケクソだとクラビー札幌に電話してみると空きがあるという・・・焦って決めなくてもきっと空室なんて結構アルに違いない。そう思ってクラビーはとりあえずキャンセルする。それから巡り巡って宿探し。なんとそれからは何処もかしこも満室御礼。私はやっと事情が飲み込めてきた。札幌は今夜、観光客だらけなのだ・・・その後、クラビー札幌にしようと電話掛け直してみると、今度は満室だと断られた。決断のタイミングを過ったらしい・・・しょうがない・・・明日は温泉にでもいってやるか・・・そんなことがあっての今日だった。そんな教訓もあって、函館へはあらかじめ宿をとってから出発することに・・・だがしかし、行ってみたい宿はすべて満室・・・いったい北海道は今どうなっているんだ!?結局函館は五稜郭(中心街)に近いビジネスホテルのなんとシングルルーム。ベッドはセミダブルだからなんとか泊まれるでしょう・・とフロントの人は言うが・・・ん〜旅行はスタートダッシュが肝要なのね。
目的地を決めてから嫁さんの準備が始まる・・・いったいいつになったら出発できるんじゃい、とイライラがつのる。なんで朝からシャワー浴びて髪ドライヤーしていちいちやり直す必要があるんじゃ〜
朝飯なんぞ期待してはいなかったが、12時も近くなってくると、空腹も我慢し難くなって、いい加減にしやがれとばかりに少々強引に出発した。
途中、函館情報を仕入れようと函館出身の通称”ビックル”さんを訪ねるが外出中。しょうがない・・・北海道情報誌サンロクマルに頼るしかない・・・。
国道5号線を小樽に向かって走ると札樽自動車道(札幌→小樽間を結ぶ高速自動車道)がなんと渋滞6キロの表示が。札幌→小樽は高速か一般道かの2ルートしか存在せず、よく混雑するが、高速が渋滞6キロとなれば一般道は更に信じ難い渋滞であろうと予測。高速を利用する事に決めるがその前に昼飯である。手稲(ていね)にある”◯の鳥らーめん”に入ってみる。この店は醤油と味噌を合わせて作った化学調味料を使わない一種類のスープしかないラーメンということだが、最近”名水ラーメン”の透き通った味覚の芸術に惚れ込んでいる私にとってこのこってりラーメンは苦痛でしかなかった。しかも大盛でチャーシューを頼んだ為、胸焼け必至だ。
腹を満たした後、覚悟を決めて高速自動車道に入る。その頃には渋滞は2キロになり、無駄話などしているうちに料金所が見えてきた。めでたく小樽に入った後はすこぶる順調で、ニセコまで直行。小休止の後、再び5号線に沿って南下。長万部(おしゃまんべ)にて給油。しかし最近ガソリン高いなーヘタな店で入れたらレギュラー108円とかするものなぁ。そしてヤンキー車が3台玉突き事故になっているのを端からみながら、おもむろにT◯TAYAでアートブレイキーを購入した。モーニンを聞きながら再び車を進める。 八雲を過ぎる頃ケンタッキーファームという魅惑の施設があり、ここで育てた自然飼育の鳥をケンタッキーフライドチキンにして味わうことができる・・・のが普通なのだが、今回は夕食を函館で食べるのが楽しみのひとつなので涙を飲んで耐える。函館に着いたのは午後6時過ぎ。まぁ、渋滞もあったがまずまずの時間に着けたと思う。ホテルにチェックインして夜の街へと繰り出す。最初はサンロクマルにビール1杯無料のクーポン券が付いていた◯小屋本店という店へ。電話予約して行ったので満席状態も少し待つ程度で席へと案内される。ここは牛タンが売りなんだな・・・と特製牛タン焼き1200円、その他ちょっと贅沢にとトロの刺身1500円など注文。満席だったので注文の品はけっこう時間を掛けて運ばれてきたが、トロの刺身を見て呆然。ルイベ状態のトロが4枚チョコンと載った皿が運ばれてきた瞬間、もう店を出る準備をしていた。私はもっと港町の情緒漂う雰囲気のある居酒屋に行きたかったのだが、どうもここは若者向きの大衆居酒屋であるようだ。特製牛タン焼もとても小さく・・・まぁ、もう来る事はあるまい。さて、仕切り直しと今度は函館名物の路面電車でJR函館駅へ向かう。そして松風町下車。ここに”裏番屋”という居酒屋があり、前回訪れた時にとても雰囲気が良かったというのでこちらに入る。ここのノレンをくぐった瞬間から、どっかの追い分け節みたいなBGM・・・一気に函館気分が高まる。しこたま海の幸を注文し、今日はここの名物というハスカップサワーとイカトンネルというものを注文。ハスカップサワーはまぁ飲みやすいソフトドリンクみたいだったが、特筆すべきはイカトンネル。なんとイカを内臓ごと塩づけにして氷らせたものを輪切りにしたというもの。食べてみるとなんともシャーベットのようだが、意外にグロい味わい。かなり抵抗があり「うわ〜〜凄いの注文しちゃったなぁ・・・」などと思いながらも我慢しながら飲み込んでみると、しばらくしてコクがなんともたまらない!これは日本酒熱燗とあわせると絶品だ!これは忘れられない味わいであった。他では味わえない珍味なので、是非こちらを訪れたら注文してみることをお勧めする。
かなり良い気分になりながら”裏番屋”を後にする。こちらでたらふく食べた額と先程の店の額がほとんど一緒であった・・・店選びは慎重にしたいもの。心ホカホカになりながら函館駅目指してトボトボと歩いていくと、あ〜港町で酒飲んでるんだなーと嬉しくなってくる。今宵も函館はとても優しかった。手頃な飲み屋も知らないので、シーポートプラザの地ビールレストランに隣接する24時間営業のショットバーへ。地味にここの店もかなりお勧めだ。なぜか・・・その理由はおつまみの盛りの良さにあった。某◯ノテカなどでチーズ盛り合わせなどを注文すると3種類が2切れづつのって1500円とか取られるのだが、こちらは1000円払うと、これだけ食べきれるの?と思う程チーズが乗ってくる。種類も意外にカマンベールを始めとして豊富だったりする。ピスタチオも頼んだが、こちらはほとんど原価提供というくらいこんもり出てきたのは嬉しかった。フードメニューがとても充実しているのが嬉しい。そしてこのショットバーでは地ビールも味わえる。ここのビールはマズイという人もいるが、私は結構美味しいと思った。某地ビールレストランではヌル〜〜かったし。営業時間が24時間っていうのはこんなにも嬉しいものなのだ。この店の名前・・・忘れてしまったけど、ノーチャージだし、観光客向けな土地にあっても、不思議と心暖まるところです。やっぱり安上がりっていうのは心に暖かいですね♪
酔っぱらい気分は最高潮、幸せ気分も絶好調になりながら、帰りは函館駅からタクシーを捕まえて宿まで直行。なんかこの時点で結構記憶がないんだよねー(笑)もうそのまま爆睡モードで次の日の朝を迎えたのでした。
<2000.10.9>
さて、今日人いう日のメインの目的は松前に行って”松前漬け”を入手すること。我々はホテルの朝食をさっさと済ませ、車で松前へ。途中、開湯800年という知内温泉へ。考えてみれば今回の旅行ではまだ温泉に浸かっていなかった。我々はいさんで入浴。昨日から知らず知らずに蓄積していた入浴欲を満たす。浸かって良し、飲んでよし・・・個人的にもココの泉質、雰囲気、共にとてもお勧めできる。まぁあまり好んで温泉を飲む人もいないと思うが、私は例によってゴクゴクとビールを飲むように・・・って飲み方としてはあまりよくないんだよね・・・。
1時間くらいのんびり浸かったのち、偶然見掛けたソバ屋
に入る。”さらしな”という藁葺き屋根のこの店・・・入るなり方言がきつい御主人が”取れたてのキノコおいしいよ〜〜〜”と薦めてくれたのでそれを食す。訪問帳のようなものをめくっていると、御主人が広末◯子も来て食べてったんだよ〜と嬉しそうに彼女の書き残しを教えてくれた。字は下手だった(笑)
とれたてのキノコは本当に絶品、蕎麦も絶品だった。本当に美味しい。知る人ぞ知る名店らしいことが、人々の書き込みによってわかってきた。御主人はキノコを取る場所をちゃんと知っていて、そこから取ってくるそうだが、最近はクマがよく現れるのでなかなあ思うように行動できないのだそうだ。「クマに会った事あるんですか?」思わず聞いてしまった。「あるなんてもんじゃない」というのが回答。そして我々はクマに会ったときの対処法をみっちり伝授してもらい、蕎麦屋を後にしたのだった。その先にある福島町はかの名横綱、千代の富士のふるさと。こちらには千代の富士記念館
があるので立ち寄ってみる。前回は青函トンネル記念館に行ったので素通りしてしまった場所だ。おそらくもう二度と行かないだろうから・・・これが立ち寄った理由。数々の名勝負をVTRで観戦できるのはとても楽しかったが、あとはトロフィーや盾ばかりであった。
今回の旅行のメインイベントではないかと思える、松前に辿り着く。松前漬けといえば”龍野屋”なぜ松前まで来るのかといえば、”ここでしか買えない滅法うまい松前漬け”があるからだ。本当にここの松前漬け、そして塩辛はわすれられない。ここの御主人も忘れられない(笑)・・・人に覚えられやすい人物は、結構人の事を覚えようとしない人物である事が多い(自分も?)。ここの御主人もそういう感じの人で、松前漬けのような顔だち・・・どことなく役者のような風格を漂わせる。まぁ、建物の造りなどがそう見せるにちがいないのだが。ふつうの松前漬けは札幌にも出荷されており、100グラム250円。しかし無添加の特製松前漬けは100グラム500円。これは是非味わっていただきたい逸品。
それに塩辛は本当に塩辛い。御主人に言わせると、この”しおからさ”が”塩辛”なのだとか。塩が効いてこそ塩辛。ちまたに出回っているほんのり甘く味付けがしてあるようなものは塩辛ではない。塩分をこよなく愛する男澤口・・・即納得。
それにしてもなんて旨すぎるんだろう・・・これほどまでに芸術的な松前漬けを食してしまうと、なかなか普通売られている松前漬けは食べられない・・・ガソリン代を出していく価値を認める。またまた幸福になる。しかし松前漬け購入後はどうしても帰路を急いでしまう。早く帰って喰いたい・・・一心なのだが、やはりそれではせっかくの旅行がもったいない。
乙部着・・・この乙部(おとべ)は4箇所ほど名水の湧く場所がある。前回はそのうちのひとつを訪れ飲んだがなかなか美味しかった。そして乙部温泉。泉質は特筆すべきものはないが、源泉が70度と多少神秘的な感じもあり、今回はそちらに入浴することに。光琳荘という乙部温泉の宿泊施設に日帰り入浴施設が隣接する。こちらは結構新しく近代的な建物で清潔感もあるが情緒はない。まぁ〜とりあえずフロントで金を払うが、”家族風呂”という文字に思わず反応してしまい、そちらのチケットを購入してしまう(爆)そして家族風呂に案内されたが、足伸ばせるし、誰もいなくてリラックスもできるんだけど、やっぱり大浴場から考えると比べ物にならン程狭くて・・・あまり良い選択とは言えなかった。入浴後、普通の男風呂に顔を出して、入ったつもりになってから施設を後に。ここに宿泊したのは本当に小学校の低学年くらいと記憶しているが・・・懐かしい・・・のか?
家族風呂を出るとき、時計は17:00だった。これから札幌に帰るのか・・そう思えば少し気が遠くなりそうな時間だ。いざ車を走らせてみると時計は15:30だった。風呂場の時計が止まっていたらしい。なんとも時間をトクしたようで、一気に気分が良くなったのだった。
江差に入るとなんと突然のスコール。江差名物五勝手屋のようかんを買い求めて五勝手屋本店へ。しばしの雨宿りのつもりが、カキモチなど結構買い込んでしまった。地ビール館などもあるが、最近では地ビールも目新しさ薄く素通り。アワビとスッポンの町、熊石町へ。嫁さんにスッポン喰うか?と尋ねても「全然要らない」との回答により、スッポンらーめんは断念。かわりに平田内温泉、見市温泉、どちらかに入ろうと思っていたが、なぜかマス鮨(表示できないが、口+ノでマスと読む字があるでしょー?ソレ)という寿司屋
の前にいた。なんか結婚式直後ということもあってか、昨日から高級志向だなぁ・・・^^;)まわる寿司屋しか行った事なかったハズなのに・・・。
こちらでおまかせ握り、お好みなどテキトーにちらほら注文。そしてさすがアワビの里。アワビは絶品。やわらかい。ついでにカニも旨かった。海岸線沿いにあるその寿司屋の窓からは日本海に沈む夕日が美しかった。
主人に温泉について伺ったら「泉質なら見市、設備なら平田内だねェ」・・・なのだそうな。平田内の夕飯はどうですか?との問いには、オレなら外に出て喰うねぇ・・・アワビ10個喰ったって4000円なんだからねぇ・・・楽園に思えた。2人でイイだけパクついて、最後には忘れられないアワビを追加注文したのに、会計してみたら2人で4000円だった。まるで回転寿司のようだった・・・。お好み寿司は頼むと2カンづつ握られてきた。アワビは400円のところに書いてあったが、400円で二つ・・・つまり1カン200円。さっき職人さんが言ってた計算とはちと合わない・・・なんだか良く”まわらない寿司屋”のシステムがわからないままだったが、安いことは確かだ!今度から松前から函館へ引き返すルートはあり得なくなってしまった・・・まてよ・・・八雲から熊石に抜ければ見市温泉→熊石アワビ三昧→松前という夢のルートも完成するのか・・・次回の旅行への期待も膨らんでくる。
素晴らしいアワビの余韻に浸りながら、日本海をそのまま北上。北桧山から長万部へ抜けるルートの方が随分と近道なのだが、瀬棚から茂田に抜ける白糸トンネルをくぐってみたかったので敢えて遠回り。もう辺りは暗くなっていた。それでもトンネルを抜けると私の崇拝する温泉”モッタ海岸温泉”の看板に反応して、ハンドルは右にきられていた。数度にわたる入浴にヘロヘロになりながらモッタの入浴であったが、こちらに新しく出来た露天風呂には誰もおらず(明日は平日だからね・・・こんな辺境の地にはなかなか都会の人間は来ないでしょ・・・)波の音を聞きながら、湯に使ったりあがったりを繰り返している内にだんだん瞑想に耽っていった。空も程よく晴れ、心地よい波の音・・・休憩室に戻ると、一気に疲れが出て少し横になった。嫁さんがあがってきたが、もうしばらく寝ていたい・・・と薄目で天井を見たら”カメムシ”数匹を発見し、落ち着いて寝てられなくなった(笑)そして眠気も覚めた。
あとはひたすら道を進み、小樽から高速を利用して帰宅してみれば意外に10時過ぎ。乙部を出た頃は日付変更線をまたぐ覚悟もしたものだったが・・・。振り返ってみればとても実り多い旅行・・・結婚式に向けた準備でしばらく遠出は御無沙汰だったので本当に楽しかった。さて、明日の朝食にはホカホカご飯に松前漬け・・・楽しみにしつつ床につく私なのでした。おしまい。