随想録


<バッハ嫌い>

<東区だより>


<バッハ嫌い>

バロック音楽を聞く度に、あぁバロックの時代に生まれなくて本当に良かったと胸を撫で下ろす。あんな退屈な音楽に囲まれた環境では自分は音楽が大嫌いに育っていただろう。

バッハを聞いて良いという人間は疲れてる人間か建築家のどちらかだ。曲を良く理解できないうちにトランス状態に陥ってそれを”心休まる音楽”と錯覚してしまう。そんな輩は夜に草原に赴いて虫の音に耳を傾けていれば良いのだ。サマーベッドに横になりながらミイラになるまで浜辺で波の音を聞いていれば良いのだ。

バッハの音楽は現代社会の縮図であるようにも思える。個々の人間がお互いに干渉しないようにビクビクしながらも、あたりさわりなく調和を保ちながらダラダラと時間が過ぎてゆく・・・。そんな曲を作る人間は10000ピースのジグソーパズルをやっと組み上げた人間と同様で”よくやったねぇ〜”程度に多少呆れながら誉めておくのが妥当だ。そしてバッハを聞いて良いと思う人間は現代社会における人間関係の恐怖に自分の殻から抜けだせない人間だと言っても良い。なんともいえない中庸さ加減がとても心地良いらしい。

人間はもっとドロドロした生き物なのに。

血沸き肉踊る・・・音楽はそうあるべきだ。

・・・さて、こんな事を書いて、自分はどうフォローするのだろうか?もうかなり手後れなのは間違いない。もう音楽界から永久追放されてしまいそうだ。否、こんな取るに足らない人物が何を言おうが無視されるだけ?

音楽の父バッハ様はとても偉大です。心から尊敬しているんです・・・演奏するのは好きです・・・だめ?もう許されない?

日本の政治家ならこのピンチをうまく切り抜ける事ができるだろうが、私にはそれは難しい。ああ・・・清水の舞台が私を呼んでいる・・・。

・・・いえ、今日ですね、バッハの演奏会があったんですけどね、あまりにもつまらなかったもので・・・バッハ先生が悪いんじゃないんですよ・・・緊張感の失せた演奏者とね、携帯電話を鳴らす聴衆が悪いんですよ。あと「数学的な美しさが良い」とかほざいている、数学なんてまるで無縁な明日香さんとかいう・・・あ、なんでもないです。ごめんなさい・・・(逃)。

<平成12年7月28日>

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<東区だより>

私の東区生活もそろそろ半年になるだろうか。

もともと札幌には長く住んでいるが、前は豊平区という都心から歩いても15分で帰宅できるところに住んでいた。会社からも徒歩10分・・・駐車場がないのが玉にキズであったが、このように便利な居住空間を私は月々27200円水道使い放題というびっくり価格で使用していた・・・まぁもっともワンルームであるが。

ススキノで飲んだくれても、残業で電車がなくなっても無理なく安心して帰宅できる・・・しかしそんな好環境にも問題はあった。気分の切り替えができないのである。シャワーを浴びても睡眠をとっても、どこか濁った水の中に浸った部分が残っているような・・・会社にずっと住み込みで生活しているような・・・そんな中途半端さが精神衛生上良くないと気付いたのだった。やはり人間は一日一日、気分をリセットできる環境に住むべきなのだ。会社とプライベートには共通なものが何一つ存在しないほうが恐らく良いのだ。

・・・そう思い、私は東区への引越しを決断したのだった。

東区というところ・・・たまねぎ畑が広がり、朝夕小中学生がはしゃぎながら登下校する姿が見られる。おそらく学校が終わってから子供達は公園でサッカーなどをやって遊んでいることだろう。”引きこもり”といった社会現象とは無縁と思われる活発さがこのへんの子供達には感じられる。気のせいか庭先の飼い犬も随分元気な感じだ。

家庭というものの暖かさ?

遠い昔に忘れてきた子供の自分が、ここ東区に来てからよく蘇ってくる。自分より背の高い草をかき分けて迷路を作った・・・その迷路の先に木や草を集めて家を作った。いや、家ではなく当時はおそらく基地だったに違いない。虫取り網でよくとんぼやチョウチョを追い回した。自分で育てたアゲハチョウを可愛がり過ぎて足をもいでしまって泣いた事もあった。今じゃ天敵とばかりに嫌悪している”蛾”すらも小さい自分にはヘンテコな蝶だった。

このような幸福感に満ちた土地に帰ってくるのに15キロという距離はやはり長い。朝のラッシュでは40〜50分掛かってしまう。これが冬になったらどうなってしまうのだろうか?東区の冬は厳しいので有名だ。畑が多いので地吹雪などがすごい。地吹雪が起これば敢然に視界は遮断され、交通はマヒしてしまう。春に越してきたばかりで東区の良いところしかまだ見ていない私だが冬の厳しさに果たして耐えていけるのだろうか?車も北海道を軽視しているとしか思えないFR車を選んでしまったし・・・。

東区の厳しい冬に不安を覚えながらも、今は夕暮れ時、オレンジ色に染まったジャガイモの花がそよ風に揺らぐのを見る度に私は幸福感に満たされる。

<平成12年7月26日>

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