(2013年12月議会参考資料一部より)

 

1. 子ども実年齢見合っていない早期老化  

2.若年性白内障歯と口の異常血液,リンパ,心臓,

消化器, 泌尿器および皮膚の疾患

   3.染色体異常細胞率は精神病理学的症
   状
を患う人に高く,染色分体異常
   細胞率は
無力症強迫恐怖症候群を患
   う人に高い

  染色体切断率は,甲状腺機能低下や,
   奇形と相関がある


染色体切断
  率は,新生児における免疫制御系失調の発生
  率と符合する。

先天性奇形の発
  生率は,汚染値が15 Ci/km^[=55万5,000 Bq/
  m^]以上の地域で高い

染色体異常数,小核数,および点突然変異
  の率は,甲状腺がんを患う子どもにおい
  て高い

汚染地域に住む人は,腫瘍細胞ばか
  りでなく「正常な」組織でも染色体異常細胞
 率が高い。

精子の構造異常の発生率と,染色体異常の
  発生頻度には相関がある
。 ゲノム構成における変化が,チェルノブイリ大惨事の最初
の危険な兆候だったことだ。数々の変化が放射線
の放出後数日のあいだに起こり,さまざまな疾患
の発生率を上昇させた。

  広島や長崎で放出され
たものより遺伝学的にはるかに危険である。なぜ
なら,チェルノブイリのメルトダウンで放出され
た放射性核種は量において数百倍も膨大で,種類
も多いからだ。


 遺伝的影響は何億人に
も及ぶ。曝された人びとストロンチウム90[Sr-90]やセシウム137は放射線量が環境放射線の値にまで下がるのに少なくとも300年を要するところ,
プルトニウムやアメリシウム[Am]は,そのきわめて危険な放射能が完全に減衰するのに1,000年単位の時間を要する。被曝した親から子へと7世代にもまたがる人びと
内分泌系の
  甲状腺は,成人では体内に入
った放射性ヨウ素全量の最大40%を,子どもで
は最大70%を集積する。また,脳下垂体はヨウ素を通常の非
放射性ヨウ素の5倍から12倍の水準で能動的に
取り込む。内分
泌系のこれら2つの重要な構成器官が,事
故後から数週間の「ヨウ素期」に放射
線に曝露した。

 あらゆる生
理機能は複合的な機能を司る内分泌器(膵臓,副
甲状腺,甲状腺,副腎,卵巣,精巣)に依存して
おり
  身体および知能の正常な発達には
甲状腺が適
切かつ適時に働く必要がある。
胎児や新生児が甲
状腺に損傷を負うと,
知的能力が抑えられたまま
一生を送ることになる
かもしれない。

   4.急速な変化見舞われた結核菌肝炎ウイルスヘルペスウイルス

タバコモザイクウイルス,サイトメガロウイルスおよび土壌細菌

,さまざまな場面で活発になった微生物個体群の病原性が強まった   

5.265集落(都市および村落)における40万人の子どもの測定
   結果が掲載されている。

 各集落における測定結果の分析には,共通する社会的・人口動態的データセシウム
  
137の内部被曝検査が実施された全日程,検査した子ども全員とリスク群に分類された子
   どもにおけるセシウム137の比放射能の平均値と最高値,子ども全員とリスク群の中央
   値,観察期間ごとの蓄積量の分布を示すグラフなどが
含まれる。この分析でリスク群に分
   類されているのは,比放射能がもっとも高かった都市部の学童30人と農村部の学童15
   人である。  多くの集落における測定は数年にわたり, また定期的に実施されたため,セシウム137
の内部被曝量の変化を追跡できており,蓄積量と季節,年齢,性別などとの関係が明らかになっている。

   6.安全を確保するもっとも簡単 な方法は,食物に取りまれた放射性核種をモニ タリングすること。ベラルーシの多くの場所で,
体内に取り込んだガンマ線放出核種の量を ホールボディカウンターによって測定した結果を 分析するとともに地元産の食物を対象に放射能 モニタリングを行ったところ,セシウム137に よる食物の汚染と,人間が体内に取り込む放射性核種の量とのあいだに高い相関が見られること, とりわけ子どもたちにそれがいえることが明らか
になっている。子どもと成人の食事内容が同じ場合,子どもは体重が軽く,また新陳代謝が活発なので,地元産の食材から受ける集積線量は成人の5倍に達する。農村に暮らす子どもが受ける集積線量は,都市部の同年齢の子どもより5倍から6倍も多い。
   

7.ペクチン含有腸内吸着剤に よる体外排出の成果
  ペクチンは消化器の中でセシウムのような陽イ オンと化学的に結合し,排便を通してセシウム137
排出量を増やすことが知られている。
「ゾステリ
  ン・ウルトラ[Zosterin-UltraR]」の商品名で知
  られる製剤は,ロシアの原子力産業で集団予
  防に用いられていた。非吸収性ペクチンであ
  るゾステリンの血液注射は,栄養摂取や新陳
  代謝その他の機能には害を及ぽざない。液状
  経口薬「ゾステリン・ウルトラ」は腸内吸着
  性および血液吸着性があり,生物学的に即効
  性の(言いかえれば治療効果のある)食品添加
  物として,ウクライナ保健省(1998年)およ
  びロシア保健省(1999年)により認可された。
 1996年,ペルラド研究所はセシウム137
  の排泄を促進するためにペクチン含有食品
  (フランスの「メデトベクドMedetopectR」」
  およびウクライナの「ヤブロペクト
  [YablopectR]」)にもとづく腸内吸着療法を開
  始した。 1999年,同研究所はヘルメス社(本
  社:ドイツ,ミュンヘン市)と共同で,「ビタ
  ヘクト
[VitapectR]」の商品名で知られるリン
  ゴペクチン含有の合成食品を開発した。ビタ
  ヘクトは粉末状で,ビタミンBi,B2,B6,Bi2,
  C,E,およびベータカロチン,葉酸を補った
  濃縮ペクチン(18〜20%)と,カリウム,亜鉛,
  鉄,カルシウムなどの微量元素,および香料
  からできている。
  

8.農作物に残留する放射性核種の濃度を下げ
  るためには‥ストロンチウム90の措抗体と
  して石灰/カルシウム肥料,セシウム137
  の措抗体としてカリウム肥料,水溶性の硬質
  リン酸塩を形成しストロンチウム90を沈殿
  させるリン酸肥料・,さらにゼオライト,水面
  下の腐植質堆積土壌(gyttja)その他,天然の
  措抗体や吸着体を用いることが有効である
 
  

9. その程度を 問わず,あらゆる生物の体細胞および生殖細胞に影響を及ぼす。 診療録の組織的隠蔽と是正不能な改
   ざん。[免疫系など]への影響。
チェルノブイリ事故に由来する死者数は
大惨事後の15年間で23万7,000人近くに達した。
  1987年から2004年にかけてのチェルノブイ
  リ事故による死者数は,前回の3国以外の
  ヨーロッパ諸国とアジア,アフリカで計46
  万2,000人近く,北米では33万1,000人近
  くにのぼったと仮定してまず間違いなく,全
  世界ではほぼ100万人に達していたことに
  なる。
チェルノブイリの犠牲者は今後,数世代に
  わたって増え続けるだろう。

10.

二次的放射能汚染

が起きている

(さらに今後も起き続ける)。

放射性核種は再循環するため,

 

[消滅や崩壊には]

予測より

ずっと長い時間

がかかっている。

 

安全とみなされるレベル

(年間1 mSv)まで

下げるためには,
 

以下を実践するとよい。
 

・菜園,牧場,干草用の草場など,

すべての農地に

無機肥料を年3回以上施肥する。
 

・地元産食材として

重要なキノコ類,ナッツ
   類,ペリ一類に含まれる

セシウム137を
効果的に減らすため

集落から半径10 km
   範囲内の森林に

カリウム[K]と

溶解性リグニン

施用する。
 

放射性核種の排泄を促進

するため,

少なくとも年4回,

天然ペクチン性

腸内吸着剤
)を支給し, 1
ヵ月のあいだ各自で規則的に摂取してもら

う。

 

幼稚園や学校に

通う子どもには

ペクチン入りジュースを

毎日飲ませるようにする。

 

牛乳,肉類,魚介類,野菜,その他の地元産食品における

放射性核種含有量を

減らす

防護対策

をとる。

 

・食肉用家畜の肥育に

腸内吸着剤

(フェロシアン化物など)

を利用する。


  疾病水準を下げ,

保養を促進するためには,
汚染地域において

以下を提供するとよい。

年に3度(子供),

年に1度(大人),

ホールボディカウンター

[人間の体内に

取り込まれ,

沈着した

放射性物質の量を

体外から測定する装置]

を用いて

1人ひとりの

体内放射性核種の

蓄積量を

実測すること

(子どもは3ヵ月ごとの実施が必要)。

・EPR線量測定

[電子スピン共鳴(EPR)線量測定]

染色体異常数の測定

などにより,

大惨事当初からの

各自の外部被曝線量を

再現すること。

 

 

 

 

 第15章
チェルノブイリ大惨事の25年後における
    住民の健康と環境への影響
アレクセイ・ V・ヤブロコフ,ヴァシリー・B・ネステレンコ,
        アレクセイ・V・ネステレンコ
チェルノブイリ原発事故に由来する放射性核種の50% 以上はベラルーシ,ウクライナ,??? ヨーロッパ側ロ
シア以遠に拡散し,遠くは北米にまで放射性物質の降下をもたらした。 1986年には,?? 4,000 Bq/m^ 以上
の放射能汚染地域に4億人近くが暮らし,いまもなお500万人近くが危険な汚染に曝されている。調査
が行われた全汚染地域において,罹病率[凡例を参照],老化の早まり,突然変異の増加が見られる。事故
に続く17年間に,???? ヨーロッパ側ロシアで3.75%,ウクライナで4.2%,総死亡率が上昇した。セシウム
137[Cs-137],ストロンチウム90[Sr-90],プルトニウム[Pu],アメリシウム[Am]は植物に吸収されて再循
環するため,内部被曝量は増え続けている。セシウム137の内部被曝線量*2がいわゆる「安全」とみな
される年間1 mSv*!2を上回っている場所では,この先,数年以内に,子どもは体重1kgあたり50 Bq/
kg.成人は75 Bq/kg に被曝量を下げなければならない。これを達成するには,農地への無機肥料の施肥,
森林地へのカリウム[K]および有機溶解性リグニンの施肥,そして天然ペクチン性腸内吸着剤の定期摂取
などが役立つ。今後25年から30年にわたって放射性核種が上壌の根圏層から植物を汚染し続けるであ
ろうベラルーシでは特に,子どもの放射線防護に向けた広範な国際支援が必要だ。被曝した動植物個体群
にはさまざまな形態異常が発生しており,?? 1986年以前はめったになかった突然変異も有意に増えている。
チェルノブイリの汚染ゾーン内は「ブラックホール」となっており,一部の生物種は非汚染地域から移動
してきた場合にのみここで存続する可能性がある。
  1986年4月26日に発生したウクライナのチェ
ルノブイリ原子力発電所4号炉における爆発は,
人間の技術が引き起こした史上最悪の事故だった。
本書の第1章から第14章で提示した知見は,数
千点に及ぶ引用学術論文やその他の文献の要約で
ある。本章では,チェルノブイリ大|参事の影響に
関するこのメタ分析から,おもな研究結果を要約
していく。
  本書のメタ分析では,集団間の比較を通じ,チ
ェルノブイリ事故による放射能汚染の影響を明ら
かにするという方法論的アプローチを主軸に置い
ている。がっての,または現在の汚染程度が異な
る地域や集団のうち,民族的,生物学的,社会的,
経済的な諸特徴が互いに似通っているもの同士を
比較する手法である。このアプローチは,罹病率
および死亡率のデータを用いて厳密に数値化した
「健康被害」と,事後の定量化が不可能な「各集
団の被曝線量」とのあいたに「統計上有意」な相
関関係を見出そうとするアプローチより,明らか
に有効性が高い。
15.1.地球規模で見た
    チェルノブイリ大惨事

  大惨事の結果,ヨーロッパの40%が危険
水準の放射能に汚染された。アジアと北米も
相当量の放射性降下物に曝された。汚染され
た国々には,オーストリア,フィンランド,
スウェーデン,ノルウェー,スイス,ルーマ
ニア,英国,ドイツ,イタリア,フランス,
ギリシヤ,アイスランド,スロベニア[など
ヨーロッパの国々]のほかに トルコ,グルジ
?
第15章 チェルノブイリ人惨事の25年後における住民の健康と環境への影響
279
?


          チェルノブイリ事故後の年数
図15.1 チェルノブイU大|参事後に増え見地球環境中の
     放射能の総量(単位はPBq[I PBq =1,000兆Bq]):
     (1)Am-241,?? (2)Pu-239十Pu-240,?? (3)Pレ241,
     (4)S「-90,?? (5)Cs-137,?? (6ル13卜Mulev, 2006)。
  ア,アルメニア,アラブ首長国連邦,中国な
  どアジアの広範な地域と,アフリカ北部も含
  まれる。 1986年の4月から7月までの期間,
  4,000 Bq/m^ を超える(0.1 Ci/km^ 以上の)地
  域には4億人近くが暮らしていた。
2.ベラルーシはとりわけ重度の汚染を被った。
  大惨事から25年を経て,現在も危険水準の
  放射能汚染が続くベラルーシ,ウクライナ,
  ヨーロッパ側ロシアの広範な地域には,約
  100 万人の子どもを含む500万人近くが暮ら
  している(第1章を参照)。
3.国際原子力機関(IAEA)と原子放射線の影
  響に関する国連科学委員会(UNSCEAR),
  その他いくつかの団体は,チェルノブイリ由
  来の放射性降下物が自然のバックグラウンド
  放射線[環境放射線1に「わずか2%」上乗せさ
  れたにすぎないというが,この主張は以下の
  事実から目をそらしている。
  ・第1に危険なほど高線量の放射線が多
   くの地域に存在し続けていること,
  ・第2心大惨事に続く数週問目高線量
   の放射線か遠く広く拡散したこと。
  ・第3に大惨事のあと何十年にもわたり,
   恒常的な低線量の汚染が続いていくこと
   (図15.1)。
280
 ・第4に核放射線の増加は,その程度を
   問わず,あらゆる生物の体細胞および生殖
   細胞に影響を及ぼすこと。
4.チェルノブイリに由来する放射性核種の約
  57%はベラルーシ,ウクライナ,ヨーロッ
  パ側ロシア以外の地域に沈着しているにもか
  加わらず,IAEAおよび世界保健機関
  (WHO)の専門家らは,そうした地域におけ
  る放射能汚染の悪影響を示す膨大なデータを
  完全に無視し,議論に取り上げようともしな
  いが(Chernobyl Forum[チェルノブイリ・フォ
  ーラム], 2005),これは科学的に正当化でき
  ない。
15.2.チェルノブイリ原発事故の
    影響分析を阻む壁
1。チェルノブイリ大惨事による健康被害の包
  括的評価は, 以下のような理由で複雑化して
  いる。
  ・大惨事後3年半にわたる,ソビエト連邦
   による診療録の組織的隠蔽と是正不能な改
   ざん。
  ・ウクライナ,ベラルーシ,ロシアにおける,
   詳細で確実に信頼に足る医療統計の不足。
  ・個々人の実際の被曝線量を推定するにあた
   っての以下5点の難しさ: (a)大惨事に続
   く数日間,数週間,ないし数カ月間におけ
   る被曝線量の再現,(b)個々の「ホットパ
   ーティクル[放射性微粒刊]の影響に関す
   る不確定要素.??? (c)不規則かつ不均一に分
   布する汚染をいかに算定するかという課題,
   (d)数ある放射性核種それぞれについて単
   独の影響および複合的な影響が確定できな
   いこと。
  ・以下の事柄に関する現代知識の不備:(a)
   数ある放射性核種のそれぞれに固有の作用,
   虚射性核種江上の,また放射性核種と
   その他の環境囚子との相乗作用,(c)集団
   および咎人における放射線感受性のばらつ
   
   き,(d)超低線量および超低線量率の影響
   (e)体内に取り込まれた放射能の,さまざ
   まな器官や生体システム[免疫系など]への
   影響。
2.?? IAEAおよびWHOの専門家らは,病気
  をチェルノブイリの放射線に関連づける唯一
  の確定的証拠として,不正確にしか算定でき
  ない個人の被曝線量(および,それにもとづ
  いた集団の被曝線量)と,厳密に診断される
  病気とのあいたに「有意な相関関係」を要求
  する。われわれの観点からすると,これは科
  学的に妥当ではない。

3.ベラルーシ,ウクライナ,ロシアで

放射性降下物の影響

を被った何百万もの人びと

の苦しみを

直接見てきた学者,

医師,その他の専門家ら

何千人もが集めたデータを,

[科学のプロトコル汗順]から外れている」として退けるのは,

科学的に正しくないと

われわれは
  考える。

 

こうしたデータから価値ある情報を
  抽出する方法を見出すことにこそ,科学とし
  ての妥当性がある。

4.チェルノブイリ大丿参事の健康被害に関わる
  客観的情報は,以下に挙げるようないくつか
  の方法で得ることができる。
 

・地理的,社会的,経済的背景が等しく,か
   って,および現在,受けている放射能汚染
   の程度とスペクトル*4だけが異なる地域の
   罹病率および死亡率を比較する。
 

・大惨事後,一定の期間における同じ集団の
   健康状態を比較し,その情報収集を複数の
   期間にわたって積み重ねる。
 

・放射線と結びつく障害や疾患のうち,年齢
   や性別との関連性がないもの(安定型染色
   体異常など)について,同一の個人の健康
   状態を比較する。
 

・体内に取り込まれたセシウム137,ストロ
   ンチウム90,プルトニウム,アメリシウ
   ムの測定を通じて,放射能汚染地域に暮ら
   す人びとの健康状態を比較する。この方法
   は,大惨事後に生まれた子どもたちの健康
   評価に特に有効である。
 

・体内に取り込まれた放射性核種の量を器官
   ごとに測定し,ある特定の器官における病
   変との相関を見る。
   大|参事の影響を客観的に記録するには,約
  80万人のリクビダートル[事故処理作業員],
  何十万人もの避難者,そしてベラルーシ,ウ
  クライナ,ロシアの放射能汚染地域を自主的
  に離れ,現在は国外も含む汚染地域の外で暮
  らす人びと(および,その子どもたち)の健康
  状態を分析する必要がある。

5.アジア(外カフカス地方,イラン,中国,
  トルコ,アラブ首長国連邦など),アフリカ
  北部,北米で,?? 1986年4月からフ月にかけ
  てチェルノブイリ由来の放射性降下物に曝さ
  れた地域を特定し,それらの地域および周辺
  地域の詳細な医療統計を分析する必要がある。
15.3.チェルノブイリ事故の健康影響
1。これまで調査対象となったチェルノブイリ
  原発事故による全汚染地域で,総罹病率が有
  意に上昇している
のは明らかだ。
2.チェルノブイリ原発事故による被曝と関連
  がある特定の健康障害のうち,以下の疾患群
  の発生率汎例を参照]と罹病率が上昇してい
  る。
 
・循環器系疾患(おもに血管の内表面を覆
   う内皮細胞が放射線に破壊されることによ
   るもの)。
  ・内分泌系疾患(特に甲状腺のがんではない
   病変)。
  ・免疫系疾患。
  ・呼吸器系疾患。
  ・泌尿生殖器系疾患。
  ・筋骨格系疾患(骨減少症,骨粗しょう症な
   ど骨の構造および成分の病変など)。
  ・巾枢神経系疾患(知的機能の低下および行
   動障害や精神障害を引き起こす,脳の前頭
   葉,側頭葉,後頭頭頂葉の変性)。

?

第15章 チェルノブイリ大惨事の25年後における住民の健康と環境への影響
281
?
  ・眼の疾患(白内障,硝子体の損傷,屈折異
   常,結膜障害)。
   ・消化器系疾患。
   ・先天性奇形,先天性異常(事故以前にはま
   れだった四肢,頭部の多重障害を含む几
   ・甲状腺がん(甲状腺がんについての予測は
   すべて誤っていた。チェルノブイリ事故に
   関連する甲状腺がんは被曝後短期間で発症
   し,進行が速く,子どもも成人も発症する。
   術後の患者は一生,代用ホルモン剤に頼る
   ことになる)。
   ・白血病(血液のがん)。子どもやリクビダー
    トルだけでなく,汚染地域の一般成人にも
    見られる。
   ・その他の悪性新生物*8[悪性腫瘍,がん]。
3.大惨事を原因とするその他の健康影響を以
  下に挙げる。
   ・身体の生物学的バランスにおける変化。腸
   管中毒症,細菌感染症,敗血症による重症
   疾患の増加を招く。        '
  ・感染性や寄生虫症(ウイルス性肝炎,ウイ
   ルス性呼吸器疾患など)の劇症化。
  ・被曝した親(リクビダートルおよび汚染地
   域から転出した人びとの双方)のもとに生
   まれた子ども,とりわけ子宮内で被曝した
   子どもに見られる健康障害の発生率上昇。
   障害は事実上全身の器官や生体システムに
   及んでおり,これには遺伝的変化*6も含ま
   れる。
  ・リクビダートル(特に1986年と1987年に
   事故処理作業に従事した人)の悲惨な健康
   状態。
  ・成人と子どもの双方に見られる老化の早ま
   り。
  ・体細胞および生殖細胞における多重突然変
   異の出現率上昇。
4.放射能汚染に関連した慢性疾患が,リクビ
  ダートルおよび汚染地域の住民に蔓延してい
  る。この人びとのあいだでは多重疾患が一般
  的である。すなわち多くの場合,1人の人が
282
?
 1度に複数の病気にかかっている
5.チェルノブイリ事故によって「がん発症の
  若年化」や以下の3つの新型症候群など,
  新たな用語が世界の医療現場をにぎわせてい
  る。
  ・[自律神経循環器系失調症[vegetovascular
   dystonia]*7」。心血管およびその他の器官が
   関与する神経系の調節不全で(自律神経失
   調症とも呼ばれ),ストレスを背景に表れ
   る臨床徴候を伴う。
  ・「長寿命核種の体内への取り込みによる各
   種臓器障害症候群[incorporated long-life ra-
   dionuclides]」。放射性核種の取り込みによ
   る心血管系,神経系,内分泌系,生殖器系。
   その他の生体システムの機能的および器質
   的障害。
  ・「上気道の急性吸気障害[acute inhalation le-
   sions of the upper respiratory tract]」。「ホッ ト
   パーティクル」など放射性核種を吸い込ん
   だために起きる,鼻炎,喉のイガイガ感,
   乾性の咳,呼吸困難,息切れの複合症状。
6.チェルノブイリ事故後,発生率の高い病気
  と絡む新たな症候群がいくつか現れた。その
  なかには以下のようなものがある。
  ・「慢性疲労症候群[chronic fatigue syndrome]]。
   いつまでも続く重度かつ原因不明の疲労,
   周期的な僻状態,記憶力低下,全身に広が
   る筋肉・関節の痛み,悪寒と発熱,激しい
   気分の浮き沈み, 頚部リンパ節の過敏,体
   重の減少。免疫系機能不全および中枢神経
   系障害に関係していることも多い

  ・「難治性放射線病症候群[lingering radiating
   illness syndrome]」。重度の疲労状態,めま
   い,震え,腰痛の複合症状。
  ・「早期老化症候群[early aging syndrome]]。高
   齢者に特有の病気を若くして発症するなど,
   身体年齢と実年齢の不一致。
7.「子宮内[胎内]被曝」,「チェルノブイリ・エ
  イズ[5.4を参照]」,「チェルノブイリ・ハー
  ト[S. 1.2を参照]」,「チェルノブイリ脚[下肢
?


  の異常]」などチェルノブイリ特有の症候群
  については,より詳細かつ確定的な医学的解
  明か待たれる。
8.大量のデータがあるにもかかわらず,汚染
  地域における健康悪化の全容はいまだ完全把
  握に遠く及ばない。チェルノブイリの影響の
  全容を知るには,医学的,生物学的,放射線
  学的な調査研究の拡大と支援が必須である。
  しかし逆回 ロシア,ウクライナ,ペラルー
  シではこうした調査研究が切り詰められてき
  ている。
9.大惨事から25年後のチェルノブイリの汚
  染地域において,そこに暮らす人びと(特に
  子ども)に見られる健康状態の悪化は,心理
  的ストレスや「放射線恐怖症*7」によるもの
  でもなければ移住のせいでもなく,ほとんど
  が主としてチェルノブイリ由来の放射線被曝
  に帰される。1986年の強烈な第1波に加え,
  低線量被曝と低線量率の被曝が慢性的に続い
  ている。
10,??? 心理的囚子(「放射線恐怖症」)が決定要素
  になることなど所詮ありえない。 というのも,
  人惨事後数年のあいた∧放射線への懸念が薄
  れる一方で,罹病率は上がり続けたからだ。
  それに 同じような健康障害が表れ,突然変
  異率も上がったノネズミ,ツバメ。カエル。
  マツの本に[放射線恐怖症]の影響があるだ
  ろうか。もちろん。社会的および経済的囚子
  が放射線による健康悪化に苦しむ人びとを圧
  迫していることに疑いの余地はない。病気,
  子どもの奇形や|障害,家族や友人の死,住居
  や大切な財産の喪失,失業,転居は,経済
  的・排神的に深刻なストレスとなっている○
15.4.犠牲者の総数

  IAEAとWHOによる初期の公式予測は,
がんの発症例引物万万二言えると見通してい
た.2005年にふ二しノ一クヅ・フォーラム
は.大作百二卜∧ご行し二号づX10人.病人
  の数が約20万人にのぽるだろうと発衣した。
  この数字では,膨大な基礎人目を背景とした
  自然死亡率や自然罹病率と,放射線開運の死
  や病気とは見分けがつかない。
2.ソ連では大惨事後まもなく平均余命が目
  に見えて短縮し乳幼児と高齢者の

罹病率および死亡率が上昇した。

3.重度汚染地城と相対的に汚染度の低かった
  地域の統計を詳細に比較倹討したところ,汚
  染地城における死亡率は,大惨事に続く15
  年から17年のあいたにヨーロッパ側ロシア
  で最大3.75%.ウクライナで侵入4.2%,そ
  れぞれ上昇を示した。
4.ベラルーシ,ウクライナ,ヨーロッパ側ロ
  シアの汚染地域における公式の人口動態統計
  の詳細な分析結果にもとづいて評価すると,
  チェルノブイリ事故に由来する死者数は

大惨事後の15年間で23万7,000人近くに達した。
  1987年から2004年にかけてのチェルノブイ
  リ事故による死者数は,前回の3国以外の
  ヨーロッパ諸国とアジア,アフリカで計46
  万2,000人近く,北米では33万1,000人近
  くにのぼったと仮定してまず間違いなく,全
  世界ではほぼ100万人に達していたことに
  なる。
5.チェルノブイリの犠牲者は今後,数世代に
  わたって増え続けるだろう。