我が国の農業研究の予算は、

世界192カ国総計の

2割を占め、

米国 に次ぐ世界2位の

農業開発大国

でもあるのです。

 

日本は

世界第5位の農業大国であり、

それは震災の被害を差し引いても

変わりません。

過去の農民がしてきたように、

私たちも今回の大震災を機に

日本の農業を

より強くしなければなりません。

 

復興の道のりは

未来を作るためのチャンスでもある。

 

農業水利設備投資と損壊額

26兆6000億円の
ストックのうち、大震災
の損壊によって2.6%
(6806億円)が損壊。

 

約40万キロに
及ぶ用水路は全国を網
の目のように巡り、その
距離は地球10周分にも
なる

 

農業産出額8兆1億円
原発事故による損害賠
償額45億5000万円

 

く原発事故による損害
額は発生から2カ月で
総産出額の0.05%。被
害にあった5県の産出
額1兆5484億円比では
0.3%となる。ただし、農
協に出荷していない農
家の損害額は含まれて
おらずれ問題の長期化に
よって数%まで広がる可
能性もあるが、他産地の
増産や輸入がカバーす
ることになるのが現実だ

 

農業のGDPとは農業生産活動を通じて1年間に生みだされた付加価値の総額のことです。

2010年、日本は世界5位です。1971年来、30年以上にわたって5位以内をキ
ープしており、

1991年から95年の5年間は

世界4位だったこともあります。

 

 

「世界第5位の農業大国」
世界5位ですから、農業大国と胸を張って間違いありません。

農業大国かどうか判断する、もう一つの指標があります。

農業生産額です。

GDPは

中間経費などを差し引いた

付加価値額ですが、

 

生産額

簡単に言えば

その国の農家の

出荷額を

足し合わせたものです。

 

言ってみれば、

農家の国別売上ランキングです。

日本2位茨城・

3位千葉の

合計は

世界比較で
アルゼンチン、デンマ
ーク、ベルギー、スイ
スより大きい

87億ドル

(8700億円)


出典:FAOSTAT2005

農産物生産額ランキング
中国
米国
インド
ブラジル
日本(5位)
フランス
ドイツ
ロシア
オーストラリア
英国
北海道(日本1位)…・…・………・………
31位 ニュージーランド

 

 

農業でも

農業大国と言って

差し支えないでしょう。

 

このデータは

各国の農業統計や

それをまとめた

FAO統計、

イギリスのエコノミスト年鑑でも

確認することができます。

この基準でも

日本は世界5位の

農業大国です。

先進国の中では

米国に次ぐ2位

ポジションになっています。

仏独英などの

EU 諸国のどこよりも多く、

広大な農地を持つ
ロシアやオーストラリアの

3倍超もの生産
高を誇っています

世界全体で見ても

日本は、

農民が大多数
を占める

1、3位の中国、インド、

2位の米国、

4位の農業立国ブラジルに

続きます。
  5位とは言っても

日本は農産物の物価が
高いから、

生産額が高いのでは

という反論もあるかもしれません。

仮に単品で

一番生産額が大きい

コメの値段が

半分になったとしても、

6位のフランスを

上回っています。

 
生産量で見ても、

個々の品目では

世界トップレベルのものが

少なくありません。

ネギ2位、

ホウレンソウ2位、

イチゴ6位、

キュウリ7位など

トップ10入りするものも珍しくあ
りません。

果物の王様リンゴで

14位、

欧米のメジャー作物ジャガイモでさえ20位と健闘し

ています

畜産品では、

卵4位を筆頭に、

豚肉15位、

牛乳20位

と肉食の歴史の浅い国にも
かかわらず、

高い生産高を誇っています。

でもなぜ日本は世界5位の農業大国になれたのでしょうか。

5つの理由があります。

まず、国土が南北に長く、四季がはっきりしていること。

小学生でも

知っている常識ですが、

とても重要なポイントです。

それがゆえに、

日本各地で

消費者ニーズに合わせた

季節折々の農産物を

1年を通じて作ることができます

反対に緯度が高い英国やドイツは国
土全体が北海道のようなものですから、冬が長く栽培期間が短いのです。ですから、いろ
いろなものを食べようと思えば輸入量が日本よりずっと多くなります
一人当たり輸入量
は日本人427キロ (家畜用のエサ含む) に対し、ドイツ人は660キロ、イギリス人5
55キロと100キロ以上も差
があるのも当然です。
  第2に 
「科学技術大国」 であることです。近代農業は科学技術の塊です。最新の機械工
学からバイオテクノロジー、栽培施設で使う高度な
環境制御技術まで何でも揃っています。品種改良技術は世界でもトップクラスです。

 

たとえば

イチゴの品種は、

世界に登録品種が
600ほどありますが、

日本だけで

約3分の1の

180種類以上保有しており、

世界一です。

 

2位のアメリカが

138品種、

残りの半数弱を

イギリス、ドイツ、カナダ、フランス、
イタリアなどの欧米先進国の登録数が

分け合っています。

センサーによる

糖度選別や

物流時の

鮮度保持技術など

周辺技術の高さも、

日本の農産物の

品質を

支えている

大切な要素です。


  こうした豊富な

農業商品に

支えられ、

全国津々浦々まで、

種屋さん、

肥料屋さん、

農機具屋さんなどの

ネットワークが

広がっているのは

日本くらいしかありません。


  そして

忘れてはならないのが

農家の向上心と

職人気質の

モノ作りへの姿勢です。


  これは

農家の人たちと

一緒に海外の農家を

視察すれば、

すぐ分かります。

「あ、この国では

このくらいのレベルの

野菜を

作れればいいんだ」

というのが、

日本の農家の反応です。


「そんな粗放的な栽培で

商品になるのか。

なんて楽なんだ」と。


果物の剪定技術など

特にそうです。

生育途中で、

日陰の実を間引きしたり、

枝ごと切ったりして、

良い実だけ残るよう

樹形を整えていきます。

篤農家(とくのうか)と

呼ばれるプロなら、

5年後の樹形を

イメージしながら

今の枝切りをしている

と言いますから

神業です。

だから、

海外の果物農家が

日本の果樹園を訪れると、

驚愕(きょうがく)します。

ブドウやリンゴ一つ一つに

袋かけをしたりして、

一個一個商品化しているのを見ると

さらに驚きます。


消費者の立場から見ても日本の農家のレベルは

想像に難くないでしょう。

海外の

どこの国でも、

スーパーや青果店に並ぶ

野菜や果物を

日本のものと比べれば、

みんな粗悪品に

見えることがあります。

形が悪かったり、

色にムラがあったり、

とても小粒なものが

あったりします。

これは摘果の基準が

緩いから

出てくる物です。

日本を除く国際標準で

言えば、
こうした青果物のかなりの量が規格内とみなされているわけです。

 

もし、

日本の農家が

海外と

同じレベルのものしか

作れなければ、

もっと輸入モノが

出回っていたはずで、

農業大国には

なっていなかった

でしょう。
 

欧米ではトマト10キロと言えばほとんど同じようなトマトですが、日本では管理技術に
よって、糖度や酸味、コクの調整で値段も変わってきます。肥料の
絶妙な使い方で、野菜
の最後の食味を仕上げていく技などは、海外の農家からしてみれば
異次元の世界です。
  これは日本が海洋大国であることにも起因しています。コンプやイワシ、カツオなど魚

介類が豊富で、

余ったものは

昔から肥料に

使われてきました。

 

今でも

「ボカシコンブ」と
いった名称の

発酵肥料は

人気があります。

どの海産物を

原料にした肥料を

いつやるかによって、

日本の農家は

野菜や果物の味が

どう変わるか

分かるのです

経験知から

伝授されてきた技術

です。

 

欧米では

家畜の糞尿からの

堆肥が中心ですから、

こうした微妙な食味管理の

ノウハウは

発達していません。
 
3つ目は世界10位の人口大国である点です。農産物の多くは鮮度が重要ですから、穀物
をのぞき工業製品のように在庫しながら、世界中に輸出しづらい商品です。自国にたくさ
ん消費者がいたほうが、それだけ売上が上がりやすい
わけです。GDPではアメリカが断
トツ世界1位ですが、農業GDPとなると人口が圧倒的に多い中国とインドが1位、2位
となるのもうなずけます。
51
4つ目は、国民の購買力が高い点です。
基本的な話とは言え、

重要なポイントです。

いくら農業がさかんでも、

お客さんが

お金を持っていなければ

いろいろな農産物を

食べてくれません。

日本の生産量が

世界的に

多い作物を見ると、

 

上位にくるのは

イチゴ、

メロン、
モモなど

単価の高い

噂好品が

ウエイトを

占めているのが

分かります。

日本経済は

良くない
とは言え、

日本人の

所得は

世界全体で見れば

高い水準です。

生産額を

人口で割ると

一人当たり

約8万円となります。

年間所得が

10万円を切る

途上国では

当然、

8万円分も

農産物を、
買うことは

不可能です。

中国は

一人当たり

1万円程度

となっています。


  五つ目

最後の理由は

何でしょうか。

独自の食文化を

持っていることにつきます。

 

上の4つの要因が

若干変動しようが、

食文化を

失わないかぎり

日本の農業は

競争力を

維持できます。

 

コメに対する

こだわりは

その代表です。

 

基本食料の穀物

品種や産地に

ここまでこだわる
国はありません。

 

パンを作るのに

小麦にこだわる

主婦は

欧米にも

いますが、

インターネット通販で

コメ代と変わらないくらいの送料をかけて

農家直送品を

普通に注文している

国民

日本人くらいしか

いません。


  和風や中華、イタリアン、フレンチ、エスニックと、

 

なんでも取り入れる

食文化のおかげで、

 

農家は作るものにも

困りません。

 

日本の世界トップ10に

入る農産物を

見ても、

アスパラや

ブロッコリー、

スイートコーンなど

ここ20年くらいで

取り入れたばかりの

洋風野菜


がランクイン

しています。

最近では

パプリカやズッキーニ

、ラデイツキオ、フィノッキオ
といったイタリアンで使う野菜も国産化し始めました。

シイタケ、シメジが代表する和のキノコ類に加え、西洋マッシュルームの

種類の

取り揃えも

充実してきています。

 

 

 こうした感受性の高い

食文化に

農家がついていっている

のです。

マッシュルームが

はやれば、

ヨーロッパから

わざわざマッシュルーム作りの

プロを高額報酬で連れてきて

雇う農家さえいます。

短期間で

必死に学んで、

自家薬籠中

(じかやくろうちゅう)

にしてしまうのです。

    ・
  食へのこだわりは

エンゲル係数(数値はOECDデータベース) の高さに出ています。
アメリカ、イギリスはそれぞれ8・7%、12・4%と低く、

14・6%のドイツが続き、先
進国で高いのはやはり二大グルメ大国フランス (16・3%)、イタリア (17・3%) です。
それを上回るのが

日本の17・6%です。

単純に物価が高い

と言うより、

うまいものに目が
ない

国民性が

所以と言ったほうが

妥当でしょう。

こうしたおかげで

日本の農家所得は

世界
6位(国民所得は23位) まで

上昇できました。


  とは言え、

日本の農業生産額が

伸び続けた

最大要因は

長期的な経済発展と

人口増加です。


生産額が

ピークを迎えたのは、

生産年齢人口が頂点に

達した95年と

時期が一致しており、
それ以後、

下降傾向が

続いています。
  他方、

外需をとりこまずに

世界5位まで到達した

先進国は日本だけです。

 

最近、

日本を
抜いたブラジルは

輸出の伸びが最大要因ですし、

2位米国、6位フランス、7位ドイツも
輸出が2、3割以上のウエイトを占めます。


もっと農業を伸ばすには、日本国民と農民が一緒に培ってきた独自品質の

農産物を、

品質を高め、

保ち、

生産高を

上げるだけです。

参考

浅川芳裕 著書『日本は世界5位の農業大国』(講談社)。

「日本の農業が必ず復活する45の理由」
二〇一一年六月三〇日 第一刷発行
    (文
春秋)