▼配当金(外国株主過半数、の配当金)原資となる内部留保の拡大
 

配当金とともに、二〇〇〇年代を通じて急拡大したのが企業の

内部留保である。

利益剰余金(企業活動で得た利益のうち、配当金などのように分配せず、社内に留保している額)の推移
116図7 企業の利益剰余金と平均給与の推移

  出典:財務省r法人企業統計調査」、国税庁F民間給与実態統計調査」
を見てみると(図7)、

 

二〇〇一年度には167.9兆円であったが、二〇一〇年度には
293.9兆円まで増加している。二〇〇〇
年度とくらべれば、1.5倍強である。
  内部留保は利益の積み増しだが、

そのベースとなっている

「利益」は

現金の形でだけ

存在するわけではない

 

工場装置、土地(有形
固定資産)となっているものもある。

したがって、

バランスシート上は

内部留保の額が多くても、

実際には企業にそれほど自由になる
資金はないという指摘もある。
 

しかし、日本銀行の発表する

[資金循環統計]

を見ると、

民間非金融法人企業の

「現金・預金」は

2012年九月末で

215兆円
となっている。

したがってほとんどの剰余金は

すぐ換金できるようになっており、

設備投
資などには回されずに、配当金の原資などとして眠っている状態なのである。

 


▼トリクルーダウン論のまやかし
  富裕層が富めば、その恩恵が低所得者層にも巡り巡っていくはずだと考えるトリクルー
ダウン理論は、アメリカではレーガン政権下で、日本では小泉政権下でよくとり上げられ
ていた。
 

しかしながら、二〇〇〇年代の景気拡大期においてもトリクルーダウンが起きなかった.
一九九〇年代後半から一貫して人件費にブレ
ーキがかかっている
ことからも明らかである。構造改革が中途半端に終わってしまったた
めにその効果が出てこなかったという指摘もあるが、それについてはかなり疑問が残る。
なぜなら、構造改革を徹底すれば株主優位となり、人件費はさらなるコストカットの憂き
にあう可能性が高いからだ。
  富裕層や大企業などごく一部の層だけに富が集中しただけで、一般の労働者の賃金に回
らない。
恩恵がしたたり落ちるどころか、生活困難者や非正規雇用者が増え、勤労世帯の
年収も低下する一方
である。構造改革が中途半端であったからこそ、それでも現状程度で
なんとか収まっているというのが実情ではなかろうか。
  「失われた二〇年」のうち、一九九〇年代は一九八〇年代までの資産バブルの後始末とし
て賃金が伸び悩んだとしても、二〇〇〇年代中盤の景気拡大局面でも賃金が抑制された
果、景気拡大の恩恵を一般国民は所得増の形で受けられていない。そのために、一般国民
の経済力が減退しているのであれば、トリクルーダウンを期待するよりも、企業の収益を
賃金や雇用拡大に回して
、たとえそれが薄いものであったとしても、多くの国民に富を分
したほうが、よっぽど国民全体の経済力のアップにもなろう。
  結局、トリクルーダウン論は富裕層に都合よくルールをつくりかえるための、口実では
なかったのか。
  前述のような連結納税制度の創設、

株式配当・譲渡益の減税など、

そして消費税も含め、
富裕者から富が

したたり落ちないようなルールを

矢継早につくり上げた結果、

中小企業以下の

零細企業ではなく、

 

グローバルに事業を展開するような

大企業が儲けやすい、

そして
株主に配当金を配りやすい

構造ができ上がっていった。

そして、大企業もそれをフル活用
した。
 

 

東京電力が

多額の政治献金をしていたことに

象徴されるように、

収益を上げた企業から

そうした献金を受け取る立場である

政治家は

より企業優遇になってしまった、

あるいは、
天下り先を

確保してくれるということで、

官僚も大企業寄りの

姿勢になってしまった

可能性は、

一切ないと言い切れるだろうか。


▼バブルがきても賃金は上がらない
 

企業が

利益追求をする集団である以上、

コストを抑えて、

収益を上げることに専念する
というのは

ある程度はわかるのだが、

 

国民に

一方的に

負担を押しつけるような

制度設計をしてまで

利益を追求する

姿勢については、

そろそろ国民全体で

見直す必要があろう。
 

 

企業自身も、株主資本主義のルール群に浸かりすぎて富の分配に偏りがあるというこ
とを、認識できなくなっているのではないだろうか。
 

二〇一三年二月、

経済団体幹部に対して

従業員の所得増を要請したことが

伝 えられた。

 

実際に、

正規雇用者の

ベースアップをする企業も

あるが、

それをしない企業側の見解として、

日本人の賃金

は世界と比較すれば依然として

高く

グローバルな競争を

展開していくためには

賃金の上乗せどころか、

カットする必要

に迫られている、

それが

株主からの要望だというコメントが紹介されていた。
 

世界的な

賃金格差があるのは当然

でそれは今に始まったことではない。

ましてや、

企業業績を見れば好転しており

なおかつ

内部留保の金額も激増

している。

こうした様子を見れば、

日本企業は

グローバルな競争社会

十分収益を上げられる構造

になっているわけである。
 

企業が収益を上げていないのであれば

なにも申し上げることはないが、

きちんと儲けがでているのであれば、

それを

国内の労働者にいくらか配るという配慮

正当な税金を払うという社会貢献

が、日本という

場所を経済活動の基盤としている企業

ならば、

必要なので
はないだろうか。
 

アベノミクスによりたとえ景気が回復しようとも、

現状のような

株主資本主義

のままでは、

賃金上昇の見込みは

薄い。

 

かつての一九八〇年代バブル期は、

狂騒の感はあれども企業の収益が

賃金と結びつく回路があった。

しかし

これから訪れる

バブルでは、

今の制度のままでは

一握りの大企業と富裕者層のみ、

その富を受け取ることとなろう。

これもまた

バブルの死角

以外のなにものでもあるまい。

 

▼格差が如実な日本の子供
 

厚生労働省が発表している「国民生活基礎
調査」によると、日本の場合、二〇〇九年の
貧困線は112万円(実質値)となっていた。
112万円に満たない

相対的貧困にある

世帯員の比率である

相対的貧困率は

16.0%

であった。

こうした相対的貧困の影響はどこに
出てくるのか。
  国税庁が発表した2011年分の

「民間給与実態統計調査」

を見ると、

女性の

二〇〇万円以下の

給与所得者の比率の高さが

目立つ。
シングルマザー

子供二人を抱えているとしよう。

二〇〇〇年代の試算では

三人世帯で

238万円

以上の可処分所得

がなければ、

日本では貧困線以下

となってしまう。

こうした相対的貧困のなかで

暮らす

「子どもの貧困率」

(一七歳以下)

は、

「国民生活基礎調査」
では

15.7%となっていた。
  二〇二一年五月末に

ユニセフのイノチェンテイ研究所が

先進国における

子供の貧困につ
いての

報告書を発表したことがあった。

日本の相対的貧困率は、

経済的先進国35力国中
9番目に高い貧困率
であり、

OECDでも一人あたりの年収が高い

二〇力国のなかでは、
日本は上から四番目(ワースト)子供の生活に大きな格差があると
いうことを示している。

 

格差を背負った場合、

就労や所得に影響し、

次の世代もまた貧困のなかに育ってしまう
という

「貧困の世代間連鎖」、

格差の固定が起こりやすい

というのが現代の特徴でもある。

たまたま

貧困家庭に生まれたことで

本人の能力が発揮できない

とすれば、

少子化の

日本に
とっては

大きな損失となろう。

 

▼ゆがんだ日本の再分配機能
 

こうした格差を

是正するために、

政府の再分配機能、

すなわち、

国民から

税金や社会保険料を受け取り、

それを、

年金や生活保護、

児童手当などの社会保障給付として

国民に返す

機能が存在する。


  OECDの調査によれば、

二〇〇〇年代なかば時点の、

再分配前の所得

(社会保険料や
税金などを引かれる前の所得)

再分配後の所得

(税や社会保険料などを払い、あらゆる給付を
受け取った後の所得)

で計算した

子供貧困率

を見ると、

ほとんどの国では

再分配後のほうが、

再分配前に

くらべて

貧困率は下がっている。

 

ところが、

OECD加盟国のなかで

再分配後の貧困率が

高くなる

という逆転現象を起こしているのが

日本なのである。

 

社会保障費
として徴収されたはずの

消費税は、

再配分され

国民の手元に

回っていくことが

ほとんどない

それを示す端的な

証拠

となろう。
 

また、

子供がいる現役世帯のうち

大人が一人の世帯

二人親の家庭

この相対的貧困率が
58.7%

と、

当時の加盟国中

もっとも高くなっているのも

日本である。

OECD平均が
30.8%

だから突出している。
 

大人一人で

子供を養育している

家庭での

経済的な困窮の背景には、

非正規雇用での低賃金労働

の問題があるだろうし、

格差を是正するはずの

再分配が機能していない

こともあるだろう。

とくに、

社会保障給付は

主に年金と医療サービスに

費やされており、

このままの社会保障制度では

高齢者には手厚いが、

子供の貧困を加速させる

可能性が高い。

▼高齢者優遇


  ある程度高齢者の社会保障費をカットする、あるいはアンバランスを是
正する、という政策が本来なされるべきであった。
ところが、高齢者と若者の投票率でいえば、2012年の衆議院選挙を見ても明らかな
ように、
一説には二〇代の若者の投票率は三〇%台、六〇代以上の投票率が約七〇%とさ
れている。こうなれば、選挙に勝ちたい政治家はどうしても高齢者優遇に重きを置くよう
になってしまう。
結局は国民の政治参加の意識の低さが、政治家の政策を高齢者寄りにさせ、その負担を
企業に強いた結果、企業も負担に耐えかねて非正規労働者の採用という選択に踏み切った
という側面がある。

あるいは

せっかく働いて

受け取った所得が、

非常に不公平な

税制度や

会計制度

によって

徴収されて

しまっている

のではないか。

その結果中間層が疲弊して長らくの景気低迷をもた
らしているのではないか、

という分析である。
 

一国の経済にとって、

とくに日本経済にとっては、

人的資源が

最大の資源になるのは、
考えてみれば

当然のことであろう。

 

資本主義経済では、

雇用される側は

消費者にほかならない。

消費者は受け取った賃金で

モノやサービスを購入する

のであるから、

ごく少数のために

多くの雇用者を

痛めつけるような政策

とれば、

内需は縮小するため、

日本経済全体も

低迷するのは

自明の理である。


  現状のままであれば、

長期の失業者となったまま、

中年になった時点でも

定職がない層が

増え、

生活保護受給者も

今後

増えていくことだろう。

 

そうしたなかで、

サブプライム危機のような、

あるいは東日本大震災のような

危機的状況に

見舞われた場合、

中間層は

一層
没落することとなる

グローバル経済の

影響によって

慢性的なデフレ状態が

続くなかで、

 

たとえば、
雇用の流動化、

すなわち非正規雇用者が

増えて

賃金は低下する

ようなことが起これば、

デフレが

さらに加速する

ことにもなる。

 

▼企業とタッグを組んでしまった労組
 

さらに雇用の流動化は、

労働組合の交渉力を弱める効果も

持ちあわせるため、

労働力の
買い叩きが

加速していくことになる

経団連はもともと、

一九四六年八月に

戦後の日本経済の再建を目的として発足した経済団体連合会委員会が母体となっている。

それと、日本経営者団体連盟(日経連)

とが統合したのが

二〇〇二年五月であった。

「戦後の日経連は、労働組合を前提とした民主的な労使関係のあり方」

について経営者に啓発する

中央機関として

設立されたものである。


  労使間の対立の

収束とともに

役割を終えたための

統合と言えば

聞こえはよいが、

 

非正規雇用者が

増えた時代背景と

重なることから、

正規雇用者と

企業サイドは

一蓮托生、

統合は

新たな労働力である

非正規雇用者や

パートタイマ−といった

労働者層との

線引きがされた、

その象徴という

意味合いのほうが

むしろ強い。

 

労働力の

買い叩きの

状況が

戦後の

日本においては

一九九〇年代後半に

至るまで

深刻な問題を

生じさせなかった点について、


 「新規の投資による生産性上昇の成果が、

春闘による

定期的な

賃上げを通して、

雇用者に
還元されて

きたからである。

 

つまり、

労働需給の

逼迫を背景にして

労働組合が

企業の利潤
最大化の

貫徹に

歯止めを

かけてきた(中略)。

?

デフレの原因は

賃金の低下であるとして、

日米欧を比較し

日本のみ

賃金の低下が

続いていると指摘した

OECDのデータが

よく取り沙汰される

ようになった。

 

ストが

活発に

おこなわれている

欧米の賃金は

上昇、

 

ストが

ほとんど

おこなわれなくなった

日本は

低下していることから、

労働組合の

組織率の低下が

賃金低下に

与えた影響について、

 

今後あらためて
デフレの

真の要因として

クローズアップされる

こととなろう。


そして、

「グローバル化を

口実にした

人件費抑制」が

行きすぎた面も

無視する

わけにはいかないだろう。

 

 

ヒト、モノ、カネが

国境を越えて

自由に動き回れる

ようになれば、

市場原理が

グローバルな規模で

働くこととなり、

世界経済全体も

効率化するー。

海外の安い
製品と

競争するためには

賃金カットも

やむなしということで、

このグローバル化も、

先のトリクルーダウンと同様に、

国内の賃金カットの

口実に使われることとなった。


  本来は

逆に

考えなければならない。

 

グローバル化によって、

先進国と新興国との

価格差が収斂していく

わけであるから、

価格の高い日本には

どうしても

デフレ圧力が

かかってしまう。

だからこそ、

国内で経済を回すために、

デフレ下でも

雇用を確保する

必要があったし、

労働組合を

強化させ

賃金上昇に

努める必要があった。

 

日本経済の

不調の原因は

中間層の没落。

 

  現在の

日本経済の

低迷の原因は、

デフレでもなければ、

企業利益の減少でもない。

 

デフレというのは

物価が下がり、

通貨の価値が

上がるという経済現象を

指す言葉で、

それ以上
でも

それ以下

でもない。

 

インフレが

好景気を

意味しないように、

デフレも

不景気を

意味するものではない。


「結果」として

発生している

デフレという現象に

答えを求めても、

それが

「原因」

でない
以上

答えが

でるわけはない。

 

むしろ

問題は、

デフレという言葉が

隠れ蓑となって、

根本的な

原因の究明を

遠ざけている

ことであろう。

 


  日本の大企業は

デフレ下においても

巨額の内部留保を

積み上げ、

株主への配当比率が


昇の一途を

たどってきたことが示す

ように、

企業利益は

減少しているどころか、

 

全体的には

増加傾向にある。
 

デフレで

日本人の所得が

下がっているのであれば、

 

日本企業の

配当率も

また下がるのが

当然ではないのか。

 

ところが逆転現象が

長らく続いている

のである。


その収益源を

賃金のカットに

求めることは、

すでに限界に

近づきつつある

のではないか

という点を指摘したい。


日本経済が

低迷している

真の要因は、

モノの値段が

下がる以上に

下落してしまった

賃金
であり、

そうして

所得が減少している

なかで

一層の負担を強いる

消費税

などの制度の導入
に求められよう。
 

したがって、

今後

どれだけ

見かけの景気が

回復しようとも、

雇用状況や

賃金の改善

ないかぎり、

 

あるいは

消費税

引き上げられ

一般国民や

中・小規模の事業者の

負担が増える


かぎり、

日本の一般国民は

疲弊

していくこととなる。

今、

正規の社員である

からといって
安泰ではない。

 

国全体の困窮化によって

自分の生活の場が

荒んでいけば、

理想的な

住処には

なりえまい。
 

企業が

疲弊しているならともかく、

今や巨額の配当金や

内部留保の存在は

隠すことはできない。

 

大企業同士の

株式の持ち合いで

多額の配当金を

支払う前に、

その一部でも

雇用の拡大や

賃金に回すことは

できないものだろうか。

 

そうした企業

への要請こそ、

政府には

最優先課題

として、

今すぐ着手していただきたい。
 

中間層の繁栄

なくして、

日本経済の繁栄も

ありえない。

エネルギー資源の乏しい日本で
最大の資源は

人的資源をおいてほかにない。

この人的資源を

コストとして

切り捨てたところに

この二〇年の問題の所在がある。

ならば、

それを見直し、

元どおりにすればよい。

安定した人間らしい生き方、

働き方を

「中間層」

取り戻す方向に

進むことこそだ。